昔々のトルエンの思い出

いい加減志賀高原の記事の続きを書かないといけないのだけど、あんこからトルエンが出たとかいうニュースを見て昔バイトでやっていたことを思い出したりしたのでちょっとそのことでも書いてみる。

トルエンは芳香族炭化水素に属する・・・云々 by Wikipedia

僕らの知らない遠くの世界では純粋なトルエンは純トロなんてよばれて高いお値段がついていたりするそうですが、今回はそっちのほうのお話ではないです。

学生時代、僕はとある工場でバイトをしていまして、その工場は某大手家電メーカーの子会社というか1次下請けみたいなところで、換気扇とかバス暖(浴室換気乾燥暖房機)なんてものを作っている工場でした。それからそのメーカーではないブランドの製品もつくっていて、釣り用品やら自転車やらをつくっている某メーカーのクーラーボックスをつくっていたりとかもしていましたね。

実際にはそれ以外の製品とか、製品になる前のいろんな部品やらも製造していましたが、実際に僕が関わったのは大体上に上げたくらいの内容です。多少はそれ以外の仕事もしましたけどそれはまたいつか。

たとえばクーラーボックスをどうやってつくるかというと、まずクーラーボックスはこんな感じのパーツで構成されています。

    • 本体の外側(アウター)
    • 本体の内側(インナー)
    • 蓋のアウター、インナー
    • 断熱材
    • そのほか取っ手やら雑多なパーツ類

これらのパーツを組み合わせているのですが、このうちアウターとインナーは社内にメガトン級のプレス成型器があって、そいつが24時間稼働で生産しています。成型器でパーツを作るには型の中に溶かした材料を流し込んで固めるので、基本的には型通りのものが成型されるのですが、どうしても注入口の部分はツノが生えたようになってしまうのでここはあとから切り取る必要があるんですが、たまに切り忘れたまま運ばれてくるんですよ。たまにっていうか、割と。こっちも忙しいんだから仕事増やすなーとか思いながら僕が切り取ったりするわけですが、そうそうこの話は全くトルエンと関係ないのでもうやめます。

さて、閑話休題。

完成したアウターとインナーはたかだか数ミリのガワですので、その間に断熱材を入れる必要があります。このメーカーのクーラーボックスはいくつかグレードがあってそのグレードによって断熱材も変わってきます。具体的には

    • 安いヤツ: 発泡スチロール
    • ちょっといいヤツ: 発泡ウレタン
    • もっといいヤツ: 発泡ウレタン+真空断熱パネル

一番安いヤツに入っている発泡スチロールは組み立ても簡単で、アウターとインナーの隙間の形につくってある箱形のスチロールをアウターに入れ込んでその上からインナーをかぶせる形になります。スポスポッとはめ込むので簡単です。とはいえ、はめ込む部分はうっかりするとうまくはまらなくて無理な事するとプラスチックでできたアウターやインナーが白化したりして課長に怒られます。ちなみにこの発泡スチロール断熱材モデルの組み立てもトルエンはまったく関係ないのです。

閑話休題 take2。

次にちょっといいヤツは断熱材が発泡スチロールから発泡ウレタンになるのですが、そうすると作業ががらっと変わります。発泡ウレタンは2つの液剤をまぜるてブクブク発泡させることで作ります。これを中身空洞で組み立てたアウターとインナーの間にちょろっと流し込んでやることで中で発泡して空間を満たすことで断熱材として機能するわけです。でも、ただ発泡させるだけじゃ不均一になる上、どんどん気泡が成長してしまうので割と構造が疎になってしまうので、多めに注入して気泡が成長する前に空間が満ちるように調節します。しかし、そうすると今度は発泡のおかげで内圧が高まって穴という穴、隙間という隙間からウレタンがはみ出してきますし、あらゆる方向に内側(アウターとインナーの隙間という意味で)から力が外向きに働きますからアウターは膨らむわ、インナーは保冷室が狭くなるわでまったく使い物にならないものができますので、ウレタンを注入するときには頑丈なケース(治具)の中に入れてから発泡させます。外から囲うのももちろん、インナーの内側も保冷室の空間の形をした詰め物をします。

まあ、これでなんとなくうまく行きそうなものですが、まだ問題があって、インナーの材料である素材と発泡ウレタンはあまり相性がよくないらしく、ウレタンを満たしても壁の内側でちゃんとくっついていてくれないらしく、その解決方法としてインナーの外壁を多少荒らしてウレタンの食いつきがよくなるようにしてやる必要があります。

そこで登場したのがトルエンでした。トルエンを壁に塗ることで材質を荒らして、ウレタン剥がれを防ぐとのことでした。

やっとトルエン登場ですね。

Wikipediaによるとトルエンは危険物指定されており、その種別は第四類 引火性液体、 第一石油類に分類されるようです。危険物なので一定量以上の保存や扱いには届け出が必要だったり、危険物取扱者自身、もしくは立ち会いの下で作業することになります。

とまあなんか危険そうに見えますが、実際はそんなに大量に扱うわけではなく、小さめの容器に移したトルエンをハケでインナーの外壁に塗る簡単なお仕事なので問題はない。たぶん現場の認識はそんなものだったんでしょうねえ。

さらに危険物の項を読んでいくと第一石油類はどんなものかということが書いてあります。

1気圧で、引火点が 21°C未満のもの。

で、現場の状態がどうかというと、もちろん地上にありますので気圧は大体1気圧です。季節は夏なので工場の中は暑く、確実に25度以上あります。必然そこにおいてあるトルエンも20度以上になっている可能性が高いです。確実に容器に火を近づけたら引火するレベルです。そんなこと知らなくても僕は絶対に火なんて近づけませんが、パートのおばちゃんのことは知りません。

保存は一斗缶を積んであったのですが、たぶん多くても5缶くらいだと思います。トルエンは非水溶性なので非水溶性第一石油類の指定数量は200L。ここらへんはさすがにクリアしています。

さらにトルエンは毒性も高いようで、劇物指定がされています。劇物に対しては毒物および劇物取締法による規制がされていて、現場に最低一人の取り扱い責任者が必要です。たぶん現場に一人くらい居たんでしょう。そう信じましょう。でもその危険性についてまったく説明はしてもらってないんですけどね。ちなみに一般的な劇物の基準は成人男性が20g程度の摂取で死ぬ位みたいですね。トルエンの密度は0.87くらいなので小さなビーカー1杯飲んだらアウトですね。飲まないけど。

さて、さらにトルエンでググると安全データシートMSDSの情報を見ることができます。MSDNじゃないよ。

上から見ていくとなかなか危険そうなことが書いてありますねー。

    • 引火点は5度。おおよそほとんどの環境で引火しそうですね。
    • 蒸気は空気より重たいので床を移動する。見えない導火線になりますねー。
    • 皮膚からも吸収します。仮に流出とかして、処理するときは酸素マスク以外に防護服もいりそうですね。
    • 1.27%volから7.0%volの濃度のとき爆発性。普通の容器に入れているときの液面の上の空間は普通に爆発領域らしい。(ソース
    • 体重1kgに対して636mg以上摂取するとラットは急性中毒になるらしい。まあ件のニュース記事の量くらいなら死にはしないけど食わないに越したことはないというか食っちゃいかんよな。

まあ、当時はこういう危険性を知らされないまま作業を始めて、その日の昼休み。僕が行ってたバイト先の工場ってのは父親が勤めている会社の組み立て工場なので父親と昼飯を食いながら父親にトルエン使ったよーとか言ったらそんなのありえねえよって怒ってたwで、父親は危険物取扱者と毒物および劇物取扱責任者持ってたからちゃんと危険性は知ってたのね。

えっとまあ、特にオチとかはないんだけど、とりあえずトルエンは食品に入っちゃいけないものであることは確かです。

 

トルエンについてググってたらでてきたコレはなんだろう。清涼飲料水?

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