Ustreamを使って配信・録画をするときの必要な準備をまとめたよ。
手軽にやるならUstream Producerで、狭い帯域でできるだけの画質ならWebコンソールで低FPSに。
Ustream配信に向けたメモ書き
必要な機材
- 配信用PC
- Webカメラ
まず最低限必要な機材はこれだけ。あと後述しますが、当然配信用PCはインターネットに接続されていることが必要です。
配信マシン:配信用のPCのスペックはそんなに必要はないけれど、ネットブックだと厳しい。たとえば購入1年以内のマシンなら十分なスペックでしょう。僕が普段配信に使うマシンはCore2Duo 2GHz~くらいのマシンですが、配信中の負荷に心配はありません。Core iシリーズのマシンなら何も問題は無いでしょう。
逆に普段の生活で動作にストレスを感じるようなマシンの場合は配信マシンとしては不安があります。マシン環境の改善もしくは別のマシンの調達を考えたほうがいいかもしれません。
Webカメラ:可能であればLogicool Pro9000, Logicool C910, Microsoft Lifecam Cinemaあたりのカメラを用意したほうが配信の映像が綺麗になります。2010/08/29現在C910はまだ新製品なのでちょっと高いですが、Pro9000, Lifecam Cinemaはずいぶん安くなったので購入を検討することをおすすめします。身の回りにこれらの機種を持っている人がいたら借りることを検討するのも一つの方法です。
ビデオカメラ:Webカメラに比べて家庭用のビデオカメラはより高い品質の映像を撮影できます。PCとビデオカメラにDV端子があれば接続してカメラとして認識することができます。(注意:DV接続したデバイスはFlashPlayerからみるとビデオデバイスは見えるけど、音声デバイスは見えないことがあります。個人的経験では、音声デバイスが見えないことのほうが多いです。その場合別途音声入力を考えることになります。あらかじめミキサー経由でオーディオIFからの入力を考えている場合でないなら、DV接続は意外と手間が増えるので手軽に配信したいのであればお勧めしません。一部のビデオカメラはUSB接続でWebカメラとして利用できる機種があります。この接続形態なら多くの場合でただしく音声デバイスも見えるので問題ないでしょう。)
ネットワーク環境
理想的には、高速な光回線に接続された、通信制限の無い、ハングアップしない(非常に重要)NATルータに有線接続されている環境が好ましいですが、以下の要件がクリアされていれば、ひとまず問題なく配信できるでしょう。
- 実測上り帯域350kbps以上を維持できる回線
- Outbound(発信方向)の接続先サーバにRTMP(1935/tcp)で接続できること
- Web配信コンソールからならHTTP通信が可能であれば1935/tcpのかわりにRTMPT(80/tcp)が利用できる。ちょっと不安定かも。
回線
2010/08現在、一般的に利用できそうな回線をあげてみます。
- イー・モバイル
- docomo データ定額
- その他3G回線
- mobile point
- livedoor wireless
- FREE SPOT
- フレッツスポット
- その他公衆無線LANサービス
- 会場提供の有線LAN
- 会場提供の無線LAN
- Mobile WiMAX
イー・モバイル:契約している人も多いので手軽で現実的な選択肢です。都市部であれば十分な速度が出ます。逆に会場に利用者が多い場合帯域を奪い合ってしまうので、会場内での利用自粛を呼びかける必要があります。
docomoデータ定額:イー・モバイルより少し高いですが、安定していると思います。端末によっては上りが400kbps弱がピークとなるけど、実際に安定してほぼフルで上り帯域を使えるので、勉強会などの配信であれば十分実用的でしょう。同じく会場での利用者が多い場合3Gの帯域を奪い合うので、利用自粛を呼びかける必要があります。
その他3G回線:auのデータ定額、iPhoneでテザリングなどの選択肢も存在しています。どうぞ、使いたい人はつかってください。
mobile point:YBBが提供しているmobile pointはマクドナルドやいくつかの飲食店の店舗内向けに提供されています。ルノアールの貸し会議室なんかでも使えると思います。店舗によって速度そのものや、速度の揺らぎが違うので事前に調査をしておいた方がいいでしょう。通信可能なポートは今のところひどい制限はないと認識していますが、店舗によって違いはあるのでしょうか。すくなくともHTTPとSSHは通るでしょう。サービスの価格は複数存在する契約ルートによって異なります。単独契約、wireless gate、wi2などがあげられます。短期間での安価な契約が複数存在しているので、比較的コストが安く済む可能性があります。
Livedoor wireless:mobile pointと同じく公衆無線LANです。概ね同様のメリットデメリットが存在します。店舗内以外でも山手線の輪の中であれば、そのあたりの電柱にAPが設置されていたりしますので、屋外でも利用可能かもしれません。しかし、山手線の輪の中で屋外で勉強会を開催するでしょうか?また、個人的にはまともにLivedoor wirelessにつながったことが無いことと、接続できたとしても非常に遅い通信しかできなかった記憶ばかりです。
FREE SPOT:店舗によっては無料で利用できるFREE SPOTサービスが利用できることがあります。無料であるというメリットはありますが、金額の問題以外のメリット・デメリットはやはり同様のものがあるでしょう。
フレッツスポット:NTTがフレッツの付加サービスとして提供しています。アクセス回線としてWiFiを利用していることは他のサービスと同様ですが、一般的な他のサービスがWiFi+DHCPでいきなりIPでつながることに対して、フレッツスポットはWiFi+PPPoEでの接続を必要とします。フレッツのサービスなので、フレッツスポットもアクセス網としてフレッツ網を経由しているのでしょう。DHCPクライアントを実装した端末に比べてPPPoEを実装した端末は若干数が減ります。しかし、配信をパソコンで行うのであれば最近の一般的なOSであればPPPoEクライアントを内蔵しているので問題ないと思います。フレッツスポットは一般的にはアクセス回線とISP接続は別提供となりますので、単体イベントでの利用では取り回しに難があるかもしれません。
その他公衆無線LANサービス:これ以外にもいくつか公衆無線LANサービスが存在しています。でもよくわかりません。公衆無線LANのメリット・デメリットは既に挙げてきた各サービスと大きく違いは無いかと思います。
会場提供の有線LAN:会場で施設の有線LANが提供されていれば比較的安定した配信が期待できます。ただし、施設のNW運用上通信制限が行われていたり、回線が細い場合がよくあるので、あらかじめよく打ち合わせをしておく必要があります。また、複数のマシンを運営上使う場合、情報コンセントの数の確認やスイッチの持ち込みなどを検討する必要があります。
会場提供の無線LAN:会場内で施設の無線LANが提供されている場合はこの無線LANを利用するのも手です。しかしこのような場合、参加者にも平等に無線LANが開放されることになるので、参加者が多い場合配信用の帯域を保証することが難しくなります。参加者に対して無線LANの利用の自粛を呼びかけるなどの対策が必要ですが、ノートPCを開いている多くの参加者がいるとして、果たして彼らは無線LANの利用を我慢できるでしょうか。
Mobile WiMAX:都市部であればWiMAXは高速で十分に安定したサービスとなってきています。しかし利用周波数の問題でWiMAXに直接接続するデバイスは屋内で十分な速度を出せるかどうか不安が残ります。USB型の端末ではなく、WiFiルータ型の端末であれば、設置位置を工夫することで安定した帯域が確保できるでしょう。盗難、紛失、バッテリー動作時のバッテリ切れに注意。
配信方法
まずはUstreamでユーザ登録とチャンネルの作成をしましょう。2010/08現在Ustreamは複数の配信方法をサポートしています。
- Web配信コンソール
- FMLE
- Ustream Producer
Web配信コンソール:Flash PlayerがインストールされているWebブラウザがあれば、ブラウザから配信ができます。配信用のGUIは比較的プリミティブな感じで、それぞれのパラメータを適切に組み合わせる(音質と画質とFPSのバランスとそれに必要な帯域とか)には多少の慣れが必要かもしれませんが、なれてしまえばおよそどんなマシンでも手軽に配信ができるようになると思います。WebコンソールではFlash Playerが対応しているSorenson/Nellymoserでの配信が可能です。これらのコーデックは昨今では見劣りするかもしれませんが、使い方によっては、まだ十分に実用的な配信が可能です。RTMPの接続ができない場合に自動的にRTMPTに切り替わってくれるのも便利なところです。RTMPTはRTMPをHTTPトンネリングするプロトコルなので、HTTP通信が通れば配信がおそらくできるでしょう。(経路に賢いHTTP Proxyがいたりすると、見破られたりするかもしれませんが。)
FMLE:AdobeがFlashのライブエンコーダとしてFlash Media Live Encoderを提供しています。Ustreamの管理画面から取得することができるFMLEのための設定ファイルを読み込ませることでFMLEからUstreamの配信サーバに対してストリーミングを行うことができます。Webコンソールによるエンコードと比べると操作が一手間増えていて、設定ファイルを読み込ませたFMLEでエンコードを開始した後に、WebコンソールにアクセスするとFMLE配信モードに切り替わっており、そのままWebコンソールの操作で配信を行います。FMLEではVP6, H.264/Nellymoser, MP3のコーデックの組み合わせで配信することが可能です。FMLEが設定可能なビットレートや映像サイズは非常に自由度が高いですが、時にUstreamで配信するには不適切な設定となる場合もあります。フルHDで配信を行うのは、配信用回線も視聴者のPCも非常に高いスペックを要求されるでしょう。
Ustream Producer:UstreamはWebコンソールに加えて、手元のコンピュータ上で動作する配信クライアントとしてUstream Producerを提供しています。有償版と無償版の二種類が提供されています。Ustream専用の配信ソフトなので、IDとパスワードを入力すればすぐに配信ができます。配信の品質もあらかじめいくつかプリセットされているものから選択できるので、うっかり変な設定で配信してしまうこともないでしょう。
配信の設定
配信におけるいくつかの設定項目があります。設定可能な項目を挙げて、いくつかのケースを考えてみましょう。ここでは、Webブラウザから利用できる配信コンソールを中心に述べていきますが、それ以外の選択肢を選ぶ場合についても、多少の補足をしています。
- 総ビットレート
- 映像品質・ビットレート
- 音声品質・ビットレート
総ビットレート:ストリームは映像ストリームと音声ストリーム、その他のわずかな付加情報のストリームが多重化されて流れていきます。総ビットレートについて気にしなければいけないことは、当然のことではありますが、利用可能な上り帯域よりも小さなビットレートでなければいけないということです。しかし、Web配信コンソールでは、明確に総ビットレートを設定する機能はありません(それどころか、音声、映像それぞれのストリームに対してのビットレートを設定する機能もありません)。Windowsならタスクマネージャ、OS Xならアクティビティモニタのネットワークのグラフとにらめっこをしながら、望む品質を最大限に達成しつつ、ネットワークの転送能力を上回らない設定を模索することになります。安全にいくのであれば、スタートは低めのパラメータにしておくといいでしょう。これは面倒くさいように見えるかもしれませんが、実際には設定項目はいくつかしか無いのでそれほど考えることは多くありません。なお、FMLEやUstream Producerの場合はビットレートを指定した設定が可能です。回線の速度がわかっている状態でこれらのソフトを利用して配信するのであれば、心配はぐっと小さくなります。しかし忘れてはいけないことは、ストリームには揺らぎがあるということです。上限ぎりぎりを狙うような設定は、配信を失敗させる要因になるかもしれません。
映像品質・ビットレート:できることならクリアで滑らかな映像を得たいでしょうが、残念ながら、回線には転送量に限界がありますし、視聴者のPCのデコード能力にも限界があります。しかし、幸いにもWebコンソールから配信できる映像は最大限の高画質を狙った設定をしたところで、せいぜい数Mbps程度の帯域しか消費しませんし、実際には高画質高フレームレートの映像が必要になるケースというのはあまり多くないでしょう。また、回線の問題でそもそもそういった設定は叶わないこともあります。
例えばスクリーンに映し出されたスライドを撮影しつつ、話者の音声を配信したい場合。重要なのは、スライドの文字が鮮明に読めることです。フレームレートは大抵の場合で2から3fpsで十分です。毎秒10枚もスライドをめくるような話者はそうそういません(毎秒2枚めくる話者は時々いますが)。そのような設定を行うには2カ所のパラメータを設定する必要があります。一つは画面右下に表示されている画質のスライダーです。スライドの文字を鮮明に撮影したいのであれば、迷わず最大まで引き上げましょう。そしてもう一つ、画質を向上させる代わりにフレームレートを低下させます。Webコンソール左下のAdvanceタブをクリックすることで現れる画質に関する詳細設定画面のフレームレート設定を2または3に設定しましょう。FMLEを利用して配信する場合も同様にフレームレートを設定する項目があります。しかし、Ustream Producerの場合は配信品質はプリセットされたものを利用することになるため、任意のフレームレートを設定することができません。今回のように前向きに低フレームレートでの利用をしたい場合はあまりよい選択肢ではありません(Ustream Producerそのものは十分な品質ですよ)。
音声品質・ビットレート:できることならクリアで歪みの無い音声を得たいでしょうが、残念ながら、回線には転送量に限界がありますし、視聴者のPCのデコード能力にも限界があります。しかし、幸にもWebコンソールから配信できる音声は最大限の高音質を狙った設定をしたところで、せいぜい数百Kbps程度の帯域しか消費しません。音声の品質に重点をおいている場合、十分な回線が確保できているのであれば、最大品質で音声を配信することは十分に現実的です。
先に挙げたような、スクリーンに映し出されたスライドと、話者のトークを配信するような場合においては、話者の言葉をクリアに伝えることは重要な課題です。可能であれば、高めの品質を設定するといいでしょう。この設定をWebコンソールで行うのであれば、Webコンソールの右下、映像の品質を設定したスライダの下にある音質スライダを最大の44kHzに設定しましょう。もちろん、配信に利用できる帯域が限られている場合はこれより小さい値を設定する必要があります。FMLEまたはUstream Producerでも同様に複数の音質を選択することができます。Ustream Producerは少数のプリセットからの選択なので、先に挙げた映像の都合もあり今回のケースに向いていませんが、FMLEはコーデックの選択肢もあり、うまく設定を選択すれば、ビットレートと品質のうまいバランスが見つかるでしょう。
よりよい配信を目指して
ここまで最小限の機材を使い、利用可能であろう回線を想定して最低限の映像配信が行えるまでの検討事項を書いてきました。そこからさらに品質の高い配信を実現するための手法について簡単にまとめてみます。
- オーディオIF+ミキサー+DV入力
- 録画と動画サイトへの公開
- バックアップ撮影
オーディオIF+ミキサー+DV入力:PCに接続したWebカメラは映像も音声も同時に入力できる便利なデバイスですが、所詮Webカメラです(昨今の性能向上はめまぐるしいですが)。もし用意できるのであれば、音声入力のIFを用意して、会場の音声出力と直接接続できればより高音質の音声ソースを手に入れることができます。
録画と動画サイトへの公開:運悪くライブ配信を見ることができなかった人のために配信の映像を録画しておき、後日閲覧できるように公開しましょう。Ustreamは配信機能に合わせて録画機能を持っています。WebコンソールでもUstream Producerでも配信ボタンのすぐ横に録画ボタンが並んでいることにすでにお気づきでしょう(配信手段にはFMLEもありますが、FMLEでの配信の操作はWebコンソール上で行うことを思い出してください)。配信するしないに独立して、好きなタイミングからの録画を残しておくことができます。一般的には、配信は最初から最後まで続けて行い、いくつかの進行上の切れ目(休憩とか)で録画を分けていくのが良いでしょう。録画されたデータにはタイトルや説明などの情報を付加することができます。後から探しやすいように適切に設定しておくことが望ましいですが、ただでさえリアルタイムに進行していくイベントの中で毎回タイトルや説明を考えることは思いの外大変です。できればあらかじめ録画を切るタイミングを考えておき、タイトルや簡単な説明は準備しておきましょう。
また、動画を公開できるサイトはUstreamだけではありません。Youtube、ニコニコ動画、好きな物を使いたいと思うでしょう。幸いUstreamで録画した映像はファイルとして取得することができます。Youtubeへの送信であれば直接Ustreamから送信することもできます。是非多くの人へすばらしい映像を届けてください。
バックアップ撮影:Ustreamはインターネットを利用した配信システムです。ベストエフォートな世界の配信はいつ失敗するかわかりません。もし配信用のカメラと別にビデオカメラを持っているのであれば、配信している映像と同様の映像をオフラインに録画しておくといいでしょう。もし配信が途切れてしまったとき、特に録画を前提としていたときには、途切れてしまった映像の代わりにオフラインで録画した映像を公開することができるでしょう。また、オフラインで録画したものを公開する前提であれば、最初から高画質な撮影や、撮影後の編集を加えてからの公開もできます。
それでは、よい配信を!
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